シカは何種類?主要8種の特徴・生息域・食べ物を図解

温帯林、草原、ツンドラ、湿地を背景に主要なシカを描いた図鑑記事のアイキャッチ シカ
シカ科約60種のうち主要8種の特徴・生息域・食べ物を紹介

「シカ」と聞いて思い浮かべる姿は、住んでいる地域によって大きく違います。日本ではニホンジカ、北米ではオジロジカやワピチ、北極圏ではトナカイ、寒い森と湿地では巨大なヘラジカが代表格です。小さなプーズーから体重数百キログラムのヘラジカまで、シカ科は驚くほど多様です。

30秒で分かる要点

  • シカ科は分類の更新が続いており、2026年版のデータベースでは現生・近世絶滅を含め約60種が扱われています。
  • 自然分布はユーラシア、アフリカ北西部、南北アメリカ。オーストラリアやニュージーランドなどには人が持ち込みました。
  • 全種が植物食の反芻動物ですが、草を多く食べる種、葉や枝を選ぶ種、冬に地衣類を使うトナカイなど、献立は同じではありません。
  • 枝角は骨でできており、多くの種では雄だけが毎年生え替えます。トナカイでは通常、雌にも枝角があります。
  • ジャコウジカはシカ科ではなくジャコウジカ科、プロングホーンも別の科です。

シカは何種類いる?

American Society of MammalogistsのMammal Diversity Database(MDD)v2.4が掲載するシカ科の種レベルの項目を数えると61です。この中には20世紀に絶滅したションブルクジカも含まれます。一方で、南米のマザマ類の分割や属の移動、新種の記載が続いているため、一般向けには「約60種」と表すのが適切です。

大きな系統は、旧世界を中心に広がったシカ亜科(Cervinae)と、ヘラジカ、ノロジカ、トナカイ、アメリカ大陸のシカなどを含むオジロジカ亜科(Capreolinae)の2つです。名前に「シカ」が付いていても、すべてが同じ属に入るわけではありません。

ニホンジカ、アカシカ、ワピチ、ダマジカ、ノロジカ、オジロジカ、トナカイ、ヘラジカを横並びにした比較図
主要8種を体格、毛色、尻斑、枝角の形で比較
代表種 見分ける特徴 主な自然分布 食べ物の傾向
ニホンジカ
Cervus nippon
夏毛の白い斑点、白い尻斑。雄は通常4尖ほどの枝角 日本列島、中国東部、朝鮮半島、ロシア極東など東アジア 草、ササ、葉、木の実、樹皮。地域と積雪で大きく変化
アカシカ
Cervus elaphus
赤褐色の夏毛。雄は大きく枝分かれした角と秋の鳴き声 ヨーロッパ、西・中央アジア、北アフリカの一部 草、広葉草本、低木の葉、若枝、木の実
ワピチ
Cervus canadensis
大型で黄白色の尻斑。雄は長大な枝角と高い声 北米と東アジア 草を多く食べ、冬は低木、枝、樹皮も利用
ダマジカ
Dama dama
雄の掌状に広がる角。斑点の残る毛色が多い 地中海東部から西アジアが自然分布の中心。各地へ移入 草、広葉草本、葉、芽、ドングリなど
ノロジカ
Capreolus capreolus
小型で尾がほとんど見えず、白い尻斑が目立つ ヨーロッパから西アジア 栄養価の高い芽、若葉、広葉草本を選んで食べる
オジロジカ
Odocoileus virginianus
逃げるとき尾を上げ、白い裏側を旗のように見せる カナダ南部から南米北部までのアメリカ大陸 葉、若枝、草、果実、ドングリ、キノコなど
トナカイ
Rangifer tarandus
雌雄とも枝角をもつことが多い。幅広い蹄と密な毛 北極圏周辺のツンドラとタイガ 夏はスゲ、草本、ヤナギ、キノコ。冬は地衣類が重要
ヘラジカ
Alces alces
現生シカ科最大。長い脚、張り出す鼻、雄の掌状角 北米・北欧・ロシアなど北半球の寒帯林 ヤナギなどの葉と枝、水草。草原で草を主食にはしにくい

生息域はツンドラから熱帯雨林まで

温帯林と草地、北極圏、湿地、熱帯林を4面で示したシカの生息環境比較
シカ科の生息域は北極圏のツンドラから熱帯雨林まで

シカ科の自然分布は、北極圏のツンドラ、針葉樹林、温帯林、草原、湿地、乾燥した低木地、東南アジアと南米の熱帯林にまで及びます。南極大陸にはおらず、オーストラリアやニュージーランドのシカは人為的に導入された集団です。

開けた環境:ワピチ、アカシカ、ダマジカ

森林と草地の境目は、隠れ場所と食物を両方得られる好適な環境です。ワピチやアカシカは草地で採食し、危険を避けるため森林へ入ります。開けた場所を使う種では群れが大きくなりやすいものの、群れの大きさは季節、性別、繁殖期によって変わります。

寒帯と湿地:トナカイ、ヘラジカ

トナカイは季節によって長距離を移動する集団があり、広がる蹄は雪上を歩くときにも、湿った地面を進むときにも役立ちます。ヘラジカは長い脚で深雪や湿地を進み、水中に頭を入れて水草を食べることもあります。どちらも寒冷地の代表ですが、生活様式は同じではありません。

密な森:キョン、プーズー、マザマ類

小型の森林性シカは、短い脚と小さな角で藪の中を移動します。南米のプーズー類はシカ科最小クラスで、東南アジアのキョン類は犬のほえる声に似た鳴き声から英語で「barking deer」と呼ばれます。キバノロは枝角をもたず、雄の上顎犬歯が長く伸びます。

食べ物は種類によって違う?

草、若葉と枝、水草、地衣類を食べる4タイプのシカを比較した図
全種が植物食でも、草・葉・水草・地衣類の配分は異なる

答えは「全種が植物食だが、選ぶ部位と季節配分が違う」です。シカ科は反芻動物で、一度飲み込んだ食物を口へ戻してかみ直し、第一胃などに住む微生物の発酵を利用します。しかし、草の繊維を大量に処理するワピチと、栄養価の高い若葉を少量ずつ選ぶノロジカでは、採食戦略が異なります。

採食タイプ 代表例 よく食べるもの 環境への対応
草を多く使う ワピチ、アカシカの一部 イネ科草本、広葉草本 草の乏しい冬は葉、枝、樹皮へ切り替える
葉・芽を選ぶ ノロジカ、ヘラジカ、オジロジカ 若葉、芽、低木の枝、果実 食物の質と分布に合わせ、こまめに場所を変える
混合型 ニホンジカ、ダマジカ 草、ササ、葉、木の実、樹皮 季節と地域に応じて草食と葉食の比率を変える
北極圏型 トナカイ 夏の草本・ヤナギ・キノコ、冬の地衣類 雪を掘って地衣類を探すが、地衣類だけを食べるわけではない

同じ種でもメニューは固定されません。ニホンジカは雪が深い年に樹皮へ頼りやすく、オジロジカは秋にドングリや果実、積雪後には若木の枝を多く利用します。「シカの好物は草」と一言でまとめるより、その場所で、その季節に得られる植物を見ることが大切です。

角ではなく「枝角」—毎年つくり直す骨

シカ科を象徴する枝角(antler)は、ウシ科の角(horn)と別物です。成長中は袋角と呼ばれる血管の多い皮膚に覆われ、完成すると皮膚がはがれ、繁殖期の後に根元から落ちます。多くの種では雄だけに生えますが、トナカイでは雌にも生えるのが普通です。

例外もあります。キバノロは雌雄とも枝角がなく、雄は長い犬歯を争いに使います。キョン類では小さな角に加えて犬歯も発達します。この違いは、繁殖行動、体の大きさ、森林の密度などが組み合わさって進化した結果です。

「シカの仲間」と間違えやすい動物

  • ジャコウジカ:ジャコウジカ科。枝角がなく、雄に長い犬歯があります。
  • マメジカ:マメジカ科。非常に小型の反芻動物ですが、シカ科ではありません。
  • プロングホーン:プロングホーン科。枝分かれした角鞘を毎年落とす独特の角をもちます。
  • カモシカ:名前にシカが付きますがウシ科で、枝角ではなく生涯伸びる角をもちます。

まとめ

  • シカ科は分類更新中で、2026年時点では約60種と考えると分かりやすい。
  • 代表8種だけでも、体格、枝角、尻斑、生息環境に大きな違いがある。
  • 全種が反芻する植物食動物だが、草、若葉、枝、水草、地衣類などの配分は異なる。
  • 枝角は毎年生え替わる骨。多くは雄だけだが、トナカイは雌にも生える。
  • ジャコウジカ、マメジカ、プロングホーン、カモシカはシカ科ではない。

主な参考資料

注:分類と分布は2026年7月確認時点。図は代表的特徴を比較する生成イメージで、個体差、亜種差、季節毛をすべて示すものではありません。

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