ウマの仲間は何種類?現生9種の特徴・生息域・食べ物を図解

家畜ウマ、モウコノウマ、野生ロバ、3種のシマウマを草原と乾燥地に描いた図鑑アイキャッチ ウマ
現生ウマ科9種相当の特徴・生息域・食べ物を紹介

ウマ科の動物は、家畜のウマだけではありません。ロバ、アジアノロバ、キャン、そして3種のシマウマも、すべて現生では同じウマ属(Equus)に入ります。姿は似ていても、モンゴルの草原、チベット高原、アフリカの半砂漠やサバンナなど、暮らす環境と食べ方にははっきりした違いがあります。

30秒で分かる要点

  • 2026年版のMammal Diversity Databaseは、家畜ウマと家畜ロバを含むウマ科を9種レベルの項目として掲載しています。
  • 現生ウマ科は1属だけですが、野生系統はウマ、ロバ、アジアノロバ、シマウマに大別できます。
  • 全種が植物食で、反芻はしません。大きな盲腸と結腸で繊維を発酵させる「後腸発酵動物」です。
  • 草を中心に食べる種が多い一方、乾季には葉や枝を増やすシマウマ、高地の草本を使うキャンなど、献立は同じではありません。
  • 「野生」と「野生化」は別です。人の管理下から野外へ戻った馬は、分類上は家畜ウマです。

ウマの仲間は何種類いる?

American Society of MammalogistsのMammal Diversity Database(MDD)v2.4では、ウマ科に9種レベルの項目があります。ただし、この数には家畜ウマ(Equus caballus)と家畜ロバ(Equus asinus)が含まれます。野生系統だけを数えると7項目です。

モウコノウマは、MDDでは野生馬 Equus ferus の中に位置づけられます。資料によって Equus przewalskii または Equus ferus przewalskii と表記されるため、図鑑を比べると種数が違って見えることがあります。ここではMDD v2.4に合わせて整理します。

家畜ウマ、家畜ロバ、モウコノウマ、アフリカノロバ、アジアノロバ、キャン、3種のシマウマを横並びにした比較図
現生ウマ科9種相当を体格、耳、毛色、縞模様で比較
種・系統 見分ける特徴 主な分布・生息環境 食べ物の傾向
家畜ウマ
Equus caballus
品種による体格・毛色差が非常に大きい 世界各地で飼育。野生化集団も各地に分布 イネ科の草や乾草など繊維質の植物が中心
家畜ロバ
Equus asinus
長い耳、短い立ちたてがみ、尾の先の房 世界各地で飼育。乾燥地への適応が高い 粗い草、広葉草本、低木などを幅広く利用
野生馬/モウコノウマ
Equus ferus
黄褐色の体、立ちたてがみ、脚の暗色部 モンゴル・中国の草原と半砂漠へ再導入 イネ科草本が中心。季節により低木も利用
アフリカノロバ
Equus africanus
灰色の体、脚の横縞、肩の暗色線が目立つ個体 エリトリア、エチオピア周辺の乾燥した岩地・半砂漠 乾燥に強い草、葉、枝。水場の位置が行動を左右
アジアノロバ
Equus hemionus
黄褐色で腹側が淡く、背中に暗色線 中東から中央アジアの砂漠、半砂漠、草原 草が中心。乾季には低木や多肉植物も利用
キャン
Equus kiang
大型の野生ロバ。赤褐色の背と白い腹の境が明瞭 チベット高原の標高の高い寒冷草原 スゲ、イネ科草本、広葉草本など
グレビーシマウマ
Equus grevyi
細く密な縞、大きく丸い耳、白い腹 ケニア北部とエチオピア南部の半乾燥草原 丈夫な草が中心。乾季には葉や枝も増える
サバンナシマウマ
Equus quagga
幅広い縞。体形と縞模様の地域差が大きい 東・南部アフリカのサバンナ、草原、疎林 イネ科草本を大量に食べ、季節移動する群れもある
ヤマシマウマ
Equus zebra
首の皮膚のひだ、腹に縞がなく、腰の格子状模様 南西アフリカの山地・乾燥した斜面 山地の草が中心。芽や葉も補助的に利用

生息域はアフリカだけではない

モンゴル草原、チベット高原、アフリカ半砂漠、サバンナと山地を4面で示したウマ科の生息環境比較
ウマ科の生息域は草原、高原、半砂漠、サバンナ、山地に広がる

シマウマの自然分布はアフリカですが、野生馬と野生ロバの中心はユーラシアです。ウマ科全体では、海抜に近い灼熱の砂漠から標高5,000メートル級のチベット高原まで、開けた環境を広く利用します。密な熱帯雨林を主な生活場所とする現生種はいません。

草原と半砂漠:野生馬とアジアノロバ

モウコノウマは風の強い草原や半砂漠で、イネ科草本を探して移動します。アジアノロバの仲間はさらに乾いた環境を使い、食物と水を求めて広い行動圏を移動します。乾燥地では、毎日同じ場所で十分な草を得ることが難しいためです。

高原:キャン

キャンはチベット高原に特化した最大級の野生ロバです。寒さ、低酸素、強い日射にさらされる高地で、スゲやイネ科草本を食べます。季節によって群れの大きさが変わり、食物条件のよい時期には大集団が見られることもあります。

サバンナと山地:3種のシマウマ

サバンナシマウマは比較的水と草の多い開けた土地、グレビーシマウマはより乾燥した北東アフリカ、ヤマシマウマは南西アフリカの険しい山地に適応しています。同じ「縞のあるウマ」でも、耳の大きさ、群れの作り方、水への依存度は異なります。

食べ物は種類によって違う?

草を食べるウマ科と胃、盲腸、結腸による後腸発酵を示す図
草食でも反芻はせず、大きな盲腸と結腸で植物繊維を発酵する

答えは「基本は草食だが、乾燥度と季節によって選択が変わる」です。ウマ科は草、スゲ、広葉草本、葉、若枝などを食べます。サバンナシマウマや家畜ウマは草の割合が高く、ロバ類は乾燥した土地の粗い植物や低木も比較的よく利用します。

採食タイプ 代表例 よく食べるもの 環境への強み
草原型 家畜ウマ、モウコノウマ、サバンナシマウマ イネ科草本を中心に広葉草本も食べる 低品質の草でも量を食べて補いやすい
乾燥地型 アフリカノロバ、アジアノロバ、グレビーシマウマ 粗い草、葉、枝、乾燥地の植物 食物がまばらでも広く歩いて探せる
高原型 キャン スゲ、イネ科草本、広葉草本 短い生育期の高地植物を季節的に利用
山地型 ヤマシマウマ 斜面の草、芽、葉 硬い蹄で岩の多い斜面を移動する

反芻しないのに、なぜ硬い草を食べられる?

ウシやシカは胃の前方で微生物発酵を行い、食べ物を口へ戻して反芻します。ウマ科は違います。胃を通過した植物繊維を、大きな盲腸と結腸で発酵させます。この仕組みを後腸発酵と呼びます。

前腸発酵の反芻動物ほど一口から徹底的に栄養を取り出せない一方、食物を比較的速く通過させ、大量に食べられる利点があります。草の質が低い場所でも、長時間採食して量で補う戦略です。このため、ウマを含むウマ科は少量の濃厚飼料だけでなく、繊維質の植物を継続して食べる体にできています。

群れの作り方も種類ごとに違う

家畜ウマの祖先系統やサバンナシマウマでは、1頭の雄、複数の雌、子からなる比較的安定した家族群が基本です。一方、グレビーシマウマや野生ロバでは、雄が水場などの縄張りを守り、雌の集まりは流動的です。見た目の似た動物でも、食物と水の分布が社会構造を変えます。

妊娠期間はおよそ1年で、通常は1頭の子を産みます。生まれた子は短時間で立ち上がり、母親について移動します。開けた土地で捕食者から逃げるため、早く歩けることが重要です。

「野生馬」と「野生化した馬」の違い

オーストラリアのブランビーや北米のムスタングは、野外で自力生活をしていますが、祖先は家畜ウマです。このような集団は「野生化馬(feral horse)」と呼ばれます。これに対し、モウコノウマは独自の進化史をもつ野生系統です。ただし、古代DNA研究により家畜化史との関係は従来より複雑だと分かり、純粋な二分法には注意が必要です。

まとめ

  • MDD v2.4では、家畜ウマと家畜ロバを含むウマ科9種相当が掲載される。
  • 現生種はすべてウマ属だが、草原、高原、砂漠、サバンナ、山地へ別々に適応した。
  • 全種が植物食。草が中心でも、乾季や乾燥地では葉や枝の利用が増える。
  • ウマ科は反芻せず、大きな盲腸と結腸を使う後腸発酵動物。
  • 安定した家族群を作る系統と、流動的な集まりを作る系統がある。

主な参考資料

注:分類と分布は2026年7月確認時点。種の扱いはデータベースにより異なります。図は比較用の生成イメージで、個体差、亜種差、品種差をすべて示すものではありません。

タイトルとURLをコピーしました