アフリカゾウとアジアゾウ、鼻の使い方はどう違う?筋肉で分かった「つかみ方」のひみつ

一本の鼻先で小枝に触れるアフリカゾウと、鼻を枝に巻きつけるアジアゾウ ゾウ
アフリカゾウの鼻は二股ではなく、一本につながった先端に小さな上下の突起があります。

動物園でゾウを見るとき、耳の大きさや背中の形に注目する人は多いでしょう。

でも、鼻の先をじっくり見たことはありますか?

アフリカゾウとアジアゾウでは、鼻先の形が違います。さらに2025年に発表された研究から、その内側にある筋肉のつくりにも違いがあることが分かってきました。

アフリカゾウは、鼻先で食べ物を「つまむ」のが得意です。一方、アジアゾウは、鼻を食べ物に「巻きつける」ようにして持ち上げます。

同じゾウの鼻なのに、なぜ使い方が違うのでしょうか。

ゾウの鼻には骨がない

ゾウの鼻は、人間の鼻と上くちびるが長く伸びた器官です。においをかぐだけでなく、食べ物を取る、水を吸う、物に触れる、仲間に合図を送るなど、さまざまな仕事をします。

これほど器用に動かせる鼻ですが、中には骨がありません。

ゾウの鼻は「筋肉だけで形を変えられる器官」です。タコの腕や私たちの舌と似た仕組みで、たくさんの細い筋肉が組み合わさることによって、曲げる、伸ばす、縮める、ねじるといった複雑な動きができます。

鼻先にある「指」の数が違う

アフリカサバンナゾウの鼻先には、上側と下側に1つずつ、合計2つの指のような突起があります。

鼻そのものが二股に分かれているわけではありません。一本につながった丸い鼻先の縁に、小さな突起が上下1つずつ付いています。

小さな食べ物を取るときは、この2つを近づけ、人間が親指と人さし指でものをつまむようにして持ち上げます。

一方、アジアゾウの鼻先にある指状の突起は、上側の1つです。下側には、指ではなく、厚くふくらんだ部分があります。アジアゾウは鼻先を食べ物に巻きつけ、このふくらみを使ってしっかり押さえます。

研究者は、アジアゾウが下側のふくらみを後ろ向きに動かし、鼻との間に食べ物をはさむ動きも観察しました。

一本の鼻先で実を持つアフリカゾウと、鼻を枝に巻きつけるアジアゾウの比較イラスト
アフリカサバンナゾウは、一本の鼻の先端にある上下の小さな突起を使って「つまみ」ます。アジアゾウは鼻を枝などに「巻きつけて」持ちます(研究内容をもとにしたイメージ)。

6頭の鼻先をマイクロCTで調べた

研究チームは、アフリカサバンナゾウ3頭とアジアゾウ3頭の鼻先を調べました。いずれも動物園で飼育され、健康上の理由などで亡くなった成獣から提供された標本です。

使われたのは「マイクロCT」という装置です。病院のCT検査のように、外からは見えない内部を細かく撮影できます。

研究者は撮影した画像をもとに、鼻先にぎっしり詰まった筋肉の束をコンピューター上で立体的に再現しました。そして、筋肉がどちら向きに走っているかを調べました。

マイクロCTでゾウの鼻先を撮影し筋肉の束を立体再構成する研究方法のイメージ
マイクロCTで鼻先の内部を撮影し、筋肉の束をコンピューター上で立体的に再現しました(研究方法を表したイメージ)。

鼻先には3方向の筋肉がある

研究では、鼻先の筋肉の束を大きく3種類に分けています。

  • 縦方向の筋肉:鼻を短くし、上下左右に曲げる
  • 放射状の筋肉:鼻を伸ばす動きなどに関わる
  • 横方向の筋肉:鼻の穴を広げたり、鼻を伸ばしたりする動きに関わる

どれか1種類だけで鼻が動くのではありません。異なる方向の筋肉が力を合わせることで、ゾウの鼻は自由自在に形を変えます。

アフリカゾウは「つまむ」動きに向いた筋肉

アフリカサバンナゾウの鼻先では、縦方向の筋肉がおよそ3分の1、放射状と横方向の筋肉がおよそ3分の2を占めていました。

特に鼻の先端へ近づくほど、放射状の筋肉の割合が大きくなっていました。こうした筋肉は、上下2つの突起を細かく動かし、食べ物をつまむ働きを助けていると考えられます。

広い草原で、地面にある葉や小さな植物を選んで取るときにも役立つかもしれません。

アジアゾウは「巻く・はさむ」動きに向いた筋肉

アジアゾウの鼻先では、縦方向の筋肉と、放射状・横方向の筋肉が、全体としておよそ半分ずつでした。アフリカサバンナゾウより縦方向の筋肉の割合が大きいことが特徴です。

縦方向の筋肉は、鼻を曲げたり巻き込んだりする動きに関係します。そのため、枝や果物のまわりに鼻を巻きつけるアジアゾウの使い方に合っている可能性があります。

さらに、下側のふくらみの近くには、内側へ集まるように走る特別な筋肉の束が見つかりました。研究者は、この筋肉がふくらみを引き戻し、食べ物を鼻との間にはさむ動きを助けていると考えています。

暮らす場所に合わせて変化したの?

アフリカサバンナゾウは、主に草原やサバンナなどで暮らします。アジアゾウは、森林を含む植物の多い環境で暮らしています。

研究チームは、地面の小さな植物をつまむことと、枝葉に鼻を巻きつけることの違いが、鼻先の形や筋肉の進化に関係した可能性を示しています。

ただし、これはまだ仮説です。暮らす場所や食べ物の違いが、鼻のつくりをどのように変えたのかを確かめるには、野生のゾウが鼻を使う様子をさらに詳しく調べる必要があります。

この研究だけで決めつけないことも大切

今回調べられたのは、アフリカサバンナゾウ3頭とアジアゾウ3頭の合計6頭です。マルミミゾウは研究に含まれていません。

数が少ないため、研究チームは正式な統計的検定を行っていません。そのため「すべてのアフリカゾウとアジアゾウが必ず同じ筋肉の割合を持つ」とまでは断定できません。

今回の発見は、鼻の使い方と筋肉のつくりが関係している可能性を示した大切な手がかりです。今後、より多くのゾウを調べることで、個体差や年齢による違いも見えてくるでしょう。

動物園で鼻先を観察してみよう

ゾウが食事をしていたら、次の点を観察してみてください。

  • 鼻先で小さな食べ物をつまんでいるか
  • 食べ物のまわりに鼻を巻きつけているか
  • 鼻先の上側と下側は、どのように動いているか
  • 大きな物と小さな物で、持ち方を変えているか

種類だけでなく、食べ物の大きさや形によっても鼻の使い方は変わります。1頭のゾウをしばらく観察すると、鼻が手のように細かく働いていることが分かるかもしれません。

まとめ

アフリカサバンナゾウとアジアゾウは、鼻先の形だけでなく、筋肉の組み合わせにも違いがありました。

アフリカサバンナゾウは、上下2つの指状の突起を使って「つまむ」のが得意です。アジアゾウは、上側の突起と下側のふくらみを使い、食べ物に鼻を「巻きつける・はさむ」動きをします。

ゾウの鼻は、ただ長いだけではありません。暮らしに必要な動きを支える、骨のない、とても器用な道具なのです。

参考にした科学論文

※本文の画像は、研究内容を分かりやすく説明するためにAIで作成したイメージです。実際の研究写真やCT画像ではありません。

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